ショーボンド建設株式会社
中部支社技術部長
山下 幸生
1999年に大阪工業大学を卒業し、ショーボンド建設に入社しました。研修後、つくば市にある補修工学研究所に配属され、知識の浅い小生意気な私を熱血上司に指導して頂きました。 研究所では「コンクリート構造学」(小林和夫著)を読み、復習することが日課でした。RCはり供試体に補強材を設置して補強効果の確認や実物大のRC床版を用いた輪荷重走行試験を通じて幅広い知識を得られ、さらに深めることができました。 2004年には鹿児島へ異動となり、塩害で損傷したPC桁の補修工事、耐震補強設計を担当することになりました。PCメーカーの技術者の方々と共に橋梁の耐震補強の計画をまとめさせていただきました。その縁もあってKABSE復元設計の友を通じて今でも交流させていただいています。 一方では、鋼桁にも触れる業務もあり、活荷重合成桁橋の床版取替工事に携わりました。床版を撤去してプレキャストコンクリート合成床版に取り換える内容でした。施工時の床版撤去後の鋼桁だけの状態をみると自分が計画したことが正しかったのかどうかと不安を覚えた記憶があります。 また、床版を設置する際、その鋼桁の上にクレーンを設置して取替床版を設置する計画であったため、横倒れ座屈が生じないように補強をしながら床版を設置し無事完工できました。 その後、研究所に戻り、8年頃から鋼板接着補強RC床版の疲労耐久性とその補修方法の評価について研究することになりました。その際に松井繁之先生、堀川都志雄先生にご指導して頂き研究成果をまとめ上げることができたことは私の大きな財産となりました。 12年には広島へ異動となり、鋼方杖ラーメン橋の耐震補強工事を経験するとともに、PCラーメン箱桁橋の耐震補強工事の設計担当になりました。私自身が張出架設やラーメン構造の設計経験がない中、建設コンサルタントの橋梁技術者の協力を得ながら補強方針を検討し、既設橋の耐震性能を評価して補強設計を行いました。 また、隠岐の島にある中路式ローゼ橋の西郷大橋の耐震補強工事(JⅤ)では、橋梁ファブリケーターの技術者のご協力を頂きながら完工させることができました。 以上のように一度も橋を設計した経験、橋を架けた経験はありません。橋を直す、バージョンアップさせるのが本業です。補強材を接合(接着)して構造物を補強する、橋と橋とのつなぎ目をなおすといったものです。 鋼桁を補強する場合、桁に孔をあけて補強材をボルトで接合します。ここで、桁に孔をあけるという行為は適切なのかどうか、PC桁を断面修復する際、はつるという行為は部位によっては構造物を傷めることではといつも自問しています。補修・補強を施工する前に一度、立ち止まって熟慮して決断することが必要です。 橋を傷めず、構造物にやさしい補修・補強を行いこれからもずっと渡れる橋を守っていく、生意気ではありますが、これがメンテナンス技術者に必要な要件ではないかと思います。これを私の橋歴書の結びと致します。 つぎは、fib Symposium 2019 Kraków PC技術調査団で交流させていただいた日本ピーエスの天谷公彦様にバトンをお繋ぎします。