やっと見えた安全

岡 寿一

鹿島建設株式会社
関東支店東部営業所鹿島・東武谷内田建設共同企業体東武浅間川橋梁改修JV工事事務所次長
岡 寿一

1998年鹿島建設に入社し、25年目を迎え、漠然と『安全』に対し向き合ってきました。 入社当時、施工管理とは、Q:品質 C:コスト D:工程 S:安全 E:環境 の管理項目を重視するべく指導を受け、なんとなくこの順番に重きを置いて従事してきました。しかし、『何よりも人命を尊重すべき』『安全〝が〟第一』をモットーに鹿島ではSEQCDと順番を改め、安全文化の定着を目指しております。そのような環境変化の中、私にもようやく『安全』を感じることが出来たので、その〝コツ〟について後ほど紹介したいと思います。 さて、私が鹿島建設を選んだ理由は、ダムを造りたかったからです。入社後、堤体積200万立方㍍のダムの仮設備の設計に携わることができ、その現場に従事できると期待していたのですが、私の配属先は5万立方メートルの小規模ダムでした。正直、寂しい気持ちでしたが、『小規模でも施工ステップは同じ。小規模ならば全ての工種を学べる。』と当時の上司の言葉通り、トンネルや橋梁もあり、コンクリートは基より、大規模土工、法面、基礎処理など、多工種を学ぶことができ、今の私の技術力は『当時の経験が全て』と言っても過言ではありません。 その後ダムを2現場経験した後、2013年より鉄道橋梁2現場に従事し、早10年目を迎えております。現在の配属先である浅間川橋梁架替工事は9年目を迎え、今年9月末に竣工となります。これだけの期間を要した理由は、営業線の鉄道橋を列車運行の維持をしながら架け替えるという難工事であること。最終列車通過後の『き電停止1:45』から始発列車通過前の『き電停止解除3:30』までの105分の間にその日の工事を終わらせなければならないことが要因です。毎晩レールを外して着工し、所定の工事を終わらせレールを連結し、始発を迎え竣工となります。毎晩が着工と竣工の緊張した日々です。時には段取不足。時には最終列車遅延により着工すらできない夜もあります。『毎日が竣工』というのは『鉄道現場ならでは』ではないでしょうか。 そのような中、私が鉄道工事に従事した10年間、無災害を継続しております。他の鉄道現場でも大きな切替工事では『災害があった』と聞いたことはありません。何故か?とよくよく考えてみると、ここに『安全のコツ』が隠れていました。105分の中で、分刻みで工事を進めます。橋梁架け替えの夜は仮設橋梁150tを本設橋梁450tに架け替えます。105分の中で皆さんはどの様に架け替えますか?大きなクレーンでも450tは困難です。その日の朝には始発を迎え入れなければならないので途中で工事を止めることはできません。 答えは営業線の真横で本設橋梁を事前に組み立て、架け替え当日の夜、仮設橋梁を押し出すとともに本設橋梁を引き込むのです。言葉では簡単ですが、具体的に数百人の作業員一人ひとりの役割分担を明確にし、分刻みで施工ステップを積み上げ、当夜、実行に移すのです。大切なことは数百人の作業員一人ひとりが『いつまでに』『何をするのか』を理解していることです。 若手技術者に問います。なんとなく指示をしていませんか?それはいつまでにやらなければならないのですか?その日一日の役割分担と目標工程を明確に指示して皆で共有してみてください。技術力も大切ですが『命は何よりも尊い』。作業員さんを無事に家族のものに帰す気持ちがどれだけ作業員さんのやる気に繋がるのか。皆さんの現場から災害が無くなることを期待して私のコラムを終わります。 次回は橋梁架替工事で共に切磋琢磨した横河ブリッジの高橋大輔さんにバトンを繋ぎます。

愛知製鋼