ICG株式会社
常務取締役
山本 孝之
私は建設業界に携わる中で、特にポストテンション桁(PC桁)の現場製作において、数々の貴重な経験と教訓を得ました。 本稿では、34年前に初めてポストテンション桁の製作に携わった際の感動的な体験と、その後のキャリアにおいて重要と感じた教訓を述べます。 初めてPC桁の現場製作に関与したのは、34年前のことです。当時、設計資料と現場の状況を照らし合わせながら、試行錯誤を繰り返し進めていきました。 竣工を迎えた際、完成したPC橋を眺めながら、「これを自分たちの手で作り上げたのだ」という実感が湧き上がり、仲間と共に達成感と充実感を分かち合いました。このときの情景は、今でも鮮明に脳裏に浮かびます。 この達成感の背後には、いくつかの突発的な問題が発生し、それに対処するために従事者全体が一丸となって取り組んだ経験があります。 その一例として、PC桁製作1本目の主桁コンクリート打設前日に発生した問題が挙げられます。主ケーブルの高さ配置ミス(計算ミス)と、主ケーブル自体の鋼材規格違いの発注ミスが発覚しました。 これらの問題は材料検収の不備によるものでしたが、発覚時には冷静に状況を把握し、チーム全体で最善の対応策を協議しました。 対応策として、組立中の主桁側型枠の片面を全て取り外し、設置していた主ケーブルの棚筋を修正・再設置することが決定されました。 また、主ケーブル自体は、メーカーの協力を得て規格基準を満たした材料を再発注し、新たに材料検収を行った上で、コンクリート打設後に取替(再挿入)を実施しました。最終的に問題は解決され、主桁コンクリート打設も無事に完了し、竣工検査にも間に合いました。 この経験を通じて、現場では多くの問題が発生することを実感しましたが、個人では解決できない問題もチームワークで乗り越えることができると学びました。 この教訓は、現在の橋梁工事やその他の施工においても活かされています。その中で、私が特に意識している点は以下の2つです。 問題を先送りせず、迅速に問題と向き合うことが重要です。解決策を1人で考えるのではなく、チーム全体で協議し、状況に応じた最適な解決策を見つけるよう心掛けています。 日頃から声を掛け合い、良好なコミュニケーションをとることが大切です。これにより、問題が発生した際にも迅速な対応が可能となり、最適な解決策を実行できる環境が整います。 橋梁施工中は、予期しないトラブルや諸問題が発生することが避けられません。しかし、土木作業員、エンジニア、コンサルタント、発注者など多くの関係者が互いに協力し合い、速やかで臨機応変な対応で問題を解決することが可能です。 PC桁製作現場で学んだことは、技術的スキルだけでなく、日頃からのコミュニケーションによるチームワークの重要性でした。 そして、共に働き問題に取り組んできた仲間との絆は、私の人生において最も貴重な財産です。この仕事に従事できたことに対し、誇りと満足感を持ち、深く感謝しています。 それでは、次号は福徳技研・代表取締役社長の徳納剛氏にバトンをお繋ぎします。