吾唯知足2020年8月21日号掲載分

吾唯知足

小紙ファン(読者)の中にも例年、お盆休みにそれぞれの故郷に里帰りする方々も多くおられることと思う▼今年の夏、とある自治体首長からの帰郷の自粛要請にため息をつき、さらに「オンライン帰省」と来るに及ぶと苦笑いするしかない▼役所であれ、企業であれ、多くの地方出身者が中央に集い、敗戦後の日本を復興させ、高度経済成長を成し遂げてきた▼先祖の墓参りすら許さぬ『コロナ禍』は我々が連綿と続けてきた習慣をいともたやすく破壊しつつある▼立錐の余地もなく混雑する鉄道、連連と続く高速道路のマイカーの車列、これら帰省ラッシュの光景も一つの繁栄の証だったと思う▼人の接触の制限は経済の失速をもたらし、4~6月期のGDPの伸び率が年率換算で前年同期比マイナス27・8%、この夏の猛暑に冷や水、いや熱湯をかけられた気分だ▼とはいえ、新型のウイルスがもたらす危機に、劇的な処方箋があるかと問われれば、ないと答えるしかない▼わかっているのは過度なワクチン開発やウイルス弱毒説に期待するのではなく、また、「イソジンでうがい」する事でもなく、これまで我々が当たり前に培ってきた真っ当な良識と叡智に立ち戻ることが必要、帰省者を罵る自粛警察など論外だ。

愛知製鋼