吾唯知足2022年6月1日号掲載分

吾唯知足 北海道・知床半島沖の観光船沈没事故は、千島海溝や日本海溝などに囲まれる日本において、海難事故の教訓として真摯に向き合っていかねばならない▼深海で長時間作業ができる飽和潜水という聞きなれない言葉も出ている。かつて東京駅の真ん前に「旧丸ビル」という巨大なビルがあり、大きさの比較対象として引き合いに出されてきた▼小紙でも本四連絡橋・瀬戸大橋の橋台、橋脚建設で取り上げている。巨大な鋼殻ケーソンを曳航、沈設してコンクリートモルタルを注入・打設したが、それが旧丸ビル大という巨大なスケールだった。しかも、約50メートルの深海に設置する難工事だ▼当時、深海作業は30メートルが限界と言われていたが、平塚の海洋科学技術センターに何度も通い、酸素からヘリウムガスに変更したことにより50メートルまで作業が可能となったことを知った▼サルベージ会社や地元の海事会社のダイバーらが、アメリカまで出かけて実地研修を行っている。世界でも珍しい道・鉄併用橋の瀬戸大橋で、そのようなエピソードがあったことを紹介しておきたい。自他ともにカッパと認める、潜水に明け暮れた元本四公団坂出工事事務所長杉田秀夫さんのダイバースタイルとボンベを背負った姿は今も忘れられない。

愛知製鋼