吾唯知足2023年11月21日号掲載分

　先月２５日、メキシコ南部のアカプルコでは最大風速７４メートルを超えるハリケーン「オーティス」が襲来した。強さの階級は最強クラスのカテゴリー５だったという▼現地メディアによれば死者・不明者を合わせると１００人に達するとされ、被害総額も数十億ドルに上るという▼世界的なリゾート地でもあり、海岸沿いには高級ホテルが立ち並ぶ。ハリケーン上陸前には海岸付近から避難を呼びかけられていたにもかかわらず、観光客などそのまま留まった人も多かった▼この「オーティス」が最強クラスのハリケーンに発達したのはエルニーニョの影響で、アカプルコ近海の海水温が３０度という異常な高温だったことで、短時間に勢力を伸ばしたことも一因とされる▼襲来から一夜明けて壁が剥がれ骨組みがむき出しになったホテルの無残な光景には、ニュース映像とはいえ慄然とした▼メキシコに観測史上最大のハリケーンが襲来した頃、地球の反対側に近い日本では秋であるにもかかわらず、連日の夏日に、やはりうんざりさせられていた▼今年の夏、世界的な気候変動を実感させられ、春夏秋冬がなくなる不安を感じつつも、「観測史上初」の災害被害の発生は人ごとではなく、正しく危機感を持つことも忘れてはならない。