ウクライナの南部ヘルソン州で6日、カホフカ水力発電所のダムが決壊、洪水により多数の住民が避難を余儀なくされ、農業にも深刻な打撃が避けられない▼住民生活に不可欠な大規模インフラを故意に破壊することは、武器を持たない民間人に対する直接攻撃同様に国際法では禁じられているはず▼ウクライナとロシア双方が、互いの行ったことと非難し合っており、また決壊直前の映像で既に劣化し崩壊の兆候が見られたという説も出て、今後の詳細な調査が待たれる▼第二次世界大戦中にもイギリス空軍が、ドイツの工業地帯にある複数のダムを爆撃、洪水で下流域一帯では1200人を超える死者が出ている▼有名な『チャスタイズ作戦』だが、当然、ドイツ国内を遊覧するわけではなく、激しい砲撃にもさらされ、作戦に参加した搭乗員133人のうち半数近い53人は死亡するという決死作戦だった▼3年前の8月には、長引く大雨により中国の三峡ダムの制限水位が超え、危険な状態になったことは記憶に新しい▼人為的な破壊行為でなくとも、深刻な事態を引き起こすことは当然だ▼日本でも近年の大雨は深刻さを増しており、治水の要であるダムの維持管理は、橋梁同様に最新の知見ときめ細かさが求められる。