1月20日未明の、探査機「SLIM」による月面着陸成功は近年、先端技術の分野で世界に遅れをとっていると指摘される日本にとって手放しで喜べる快挙だった▼旧ソ連、米国、中国、インドに次ぐ世界で5カ国目の月面着陸となるが、特筆すべきは世界初のピンポイント着陸だ▼これまでの着陸は目標地点に対して数キロ~数十キロの誤差があったが、SLIMは目標の100㍍以内の着陸を目指したという▼月の赤道から少し南側となる「神酒(みき)の海」内にある直径約300メートルのクレータ「SHIOLI」が目標▼精度の高い着陸を支えたのが「画像照合航法」と探査機の頭脳である「航法誘導制御」の技術。目標から55メートルずれただけで見事に導いた▼また軽量・小型の機体に適した着地方法として考案されたのが「2段階着陸」方式。まず機体の最下部にある主脚が接地後、倒れこむようにして機体側面の補助脚で着地する▼着地後、逆さまになっていたことに多くの人が驚愕、ただし電力供給のための太陽光パネルに影響はなく、太陽の向き次第で作動を開始している▼世界的な気象変動、ウクライナやガザの戦争など問題が山積する地上から、ほんの少しの間だけ視点を移し夜空に浮かぶ月を眺めてほっと一息つく。