吾唯知足2024年8月21日号掲載分

吾唯知足 11日にパリオリンピックが閉幕した。船上パレードで開幕しセーヌ川を前面に押し出した大会だったが、川を泳がされたトライアスロンやマラソンスイミングの選手からは、なかなか芳しい感想は得られていない▼学生時代に読んだ文豪ユゴーのレ・ミゼラブルでは、主人公ジャン・バルジャンは、王政打倒に市民が蜂起した1832年の6月暴動のさなか、市街戦となったパリの街から地下へと下り下水道を逃げ回るのだが、その悪臭や汚泥の中を延々歩く描写には不思議に魅了された▼ジャン・バルジャンが逃げ回った時代、下水道は約226キロ程度だったそうだが、現在は2600キロにも及ぶ下水道が縦横に巡らされているという▼ここから押し流される生活排水が水質を悪化させ1923年からセーヌ川は遊泳禁止となる。それを改善すべく実に14億ユーロ、日本円にすれば約2280億円を超す巨費が投じられた▼オリンピック開催前にはパリのアンヌ・イダルゴ市長がセーヌ川を泳ぎ水質改善をアピールしたが、これについては多くのパリ市民が疑問視しているという▼トライアスロン競技の中継では会場となったアレクサンデル3世橋が画面に大いに映える。水質はともかくセーヌの名橋の美しさは微塵も揺るがない。

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