日之出水道機器株式会社
建築・土木マーケティンググループ土木マーケティングチームマネージャー
村山 稔
橋との一番古い記録は、2本の主塔が立ち、まだメインケーブルが架けられていない関門橋を背にした幼い頃の写真になります。 私は、山口県下関市で生まれ育ち、福岡の大学へ進学、機械工学系の学部でしたので、ものづくりに携わっていきたいとの思いから、今の会社に就職しました。 日之出水道機器株式会社は、1919年創業の、鋳鉄やポリマーコンクリート等の材料技術を活用した公共構造物や産業機械等の研究開発および製造、販売を行っている会社で、一番身近な製品で言いますと路上に設置されているマンホール鉄蓋があります。マンホール鉄蓋は、地下構造物の点検孔としての役割だけでなく、上部を車両や人が通行しますので、小さな「路上の橋」としての役割も担っています。 また、最近では、表面に描かれた各地域の特長を表すデザインを写したマンホールカードを発行される自治体様が増えられてきており、マンホール鉄蓋への理解や関心が深まってきているものと感じています。 入社後、マンホール鉄蓋を製造する栃木工場に配属され、5年間、鋳造、機械加工、塗装工程を担当しました。1300℃を超える溶けた鉄系材料、40秒サイクルで動くライン、最大270V/240Aが通電するラインなどを備える現場において、上司、先輩、現場作業者の方々から、先ずは厳しく安全面を、次に、手を掛ければ掛けたなり、手を抜けば抜いたなりの製品ができあがることを、日々の業務と製品の出来栄え確認の中で指導いただきました。 5年間の工場勤務の後半には、製造管理の業務に加え、新規設備導入に係る計画と工事、設備立ち上げに従事しました。会社に寝泊まりして初期トラブル対応し、製品検査に合格し、設備立ち上げが完了した時は、それまでの苦労も吹き飛んだことを覚えています。 その後、生産技術の管理や企画、マンホール鉄蓋以外の分野での鋳鉄適用に向けたマーケティング活動や製品開発などに携わり、2014年より、鋳鉄を使った道路橋用床版の研究、開発に従事しています。 道路橋用の鋳鉄床版には、球状黒鉛鋳鉄のFCD500‐7(引張強さ500N/●(㎜2)以上、0.2%耐力320N/●(㎜2)以上、伸び7%以上:JIS G5502)を用い、鋳造による一体成形と自由成形を活かした軽量且つ耐疲労性と急速施工性に優れることを目標に、九州工業大学大学院の山口栄輝先生らと国土交通省新道路技術会議の研究公募にて鋳鉄床版パネルの耐荷性、耐久性を検証し、一般財団法人阪神高速先進技術研究所、大成建設株式会社、佐藤鉄工株式会社と鋳鉄床版の施工方法の研究開発を行っています。 鋳鉄は、基地組織に含まれる黒鉛の影響により溶接性が悪い材料であるため、床版パネルの接合は高力ボルトを使った摩擦接合構造とするために、大阪市立大学大学院の山口隆司先生らと接合面処理条件を検証し、実物大の鋳鉄床版パネルを使った輪荷重走行試験や模擬橋梁への施工試験を行い、鋳鉄床版の実橋適用に向けた活動を推進しています。 1994年の入社から27年が過ぎ、これまでの企業人生を振り返ると、様々な部署で仕事や経験を積む中で、多くの社内外関係者の方々と出会い、チームとして協力連携いただけたことで、多くの業務において、効率的に、効果的に、相乗的に、成果創出できてきたことに、心から感謝する次第です。 今後も、感謝の気持ちを持ちつつ、多くの方々と協同し、活動を進めていきたいと思います。 次は、鋳鉄床版の施工方法の研究開発で大変お世話になっております、大成建設株式会社の水谷公昭様にバトンをつなぎます。