女性の職場復帰容易に

大瀧 士郎

株式会社横河ブリッジ
設計本部 東京設計第一部 設計情報課長
大瀧 士郎

大瀧氏の所属している設計情報(原寸)部門には現在、8名の女性が在籍している。
元々原寸部門は2次元図面に基いて部材を実物大で床面に描き、鋼橋特有のキャンバー(そり)や溶接による収縮を考慮して鋼板の切断形状を手作業で決定する工場の一部門だったことから、長らく男性中心で経験に依存する職場となっていた。
現在はコンピュータ導入による合理化が進み、製作情報システム上で3次元モデルを再現。施工性や部材相互の干渉有無のチェック、工場で必要なNCデータ、資料作成など、設計、製作部門の支援、仲立ちも行う設計情報部門へと衣替えしている。
大瀧氏が現部署に異動した14年当時は、若手がベテランの下で経験を重ねながら課業を習得する状況で、特に出産・育児休業といったライフイベントで中断を余儀なくされる女性技術者にとってスキルアップ、キャリアアップの障害となっていた。
そこで、まず作業の標準化、システムによる自動処理やアウトソーシングの範囲拡大を推進した。従来は中堅以上の男性が担当していた業務にも若手女性を抜擢し、主体的な立場で任せる時期を早めた。これらの施策によりキャリア初期の技術習得期間を大幅短縮。出産・育児休業を迎える前に完了させることで職場復帰を容易にした。
復帰にあたり、「保育所の入所が難しい場合は、人事部門と相談しながら弾力的に運用している」という。時短勤務についても、「担当物件のすべてをひとりに任せずに、あふれる分をほかの課員が受け止めるのが当然であるという認識を全員で共有している」とのこと。
女性技術者が出産後に復帰するのも同社では設計情報部門が初、いわばトップランナーだ。ロールモデルとしての育成を行いつつ、会社の福利厚生についての要望を吸上げ、活用しやすい制度へと拡充を図っている。
「我々の目標は業務の担い手を男性から女性に置き換えることではない。男女問わずベテランも経験したことのない多様なフィールドへと業務の幅を拡大することで、やりがいを感じてもらいながら次の高みを目指している。そうした取組みが配属希望者の増加につながっているのかもしれない」
実際にCIM推進や海外展開の分野における活躍も目立ち始めた。今夏はミャンマーで現地の製作会社やヤンゴン市内の状況を視察。会社初となる女性技術者の海外派遣に道筋を付けた。年内にも実現する予定だ。ミャンマー行きの女性技術者は「今の職場は作業の標準化や業務調整の体制が整っている。海外では原寸技術者としての部分以外でもスキルアップしたい」と意欲を見せている。
大瀧氏は東京生まれの横浜育ち。横浜国立大学大学院工学研究科修了。50歳。

愛知製鋼