株式会社 共同技術コンサルタント
本社技術1部
黒木 隆二
1993年、大学を卒業しPC橋の建設を得意とする富士ピーエスに入社。入社して間もなく、第三京浜新港北IC(現都筑IC)のランプ橋の現場に勤務。固定支保工によるPC箱桁橋、PC中空床版橋の施工に関わることになりました。PC箱桁橋は、外観、非常に重厚なイメージで、内部にPCケーブルが配置されプレストレスを導入していることを知ったとしても、空中に浮いているのが不思議に見えました。当初は、作業工程や日々の作業内容を理解できずに現場と事務所を行き来しながら、所長や主任からの指示を作業員に伝えるだけの伝言板だった私も、完成が近づく頃には一人前になったような気がしていました。
その後、技術部に配属され、PC橋の設計に関わることとなりました。それ以来、橋を見るたびにどんな形状をしているのか、PCケーブルがどのように配置されているのか気になるようになりました。PC橋の構造計算や図面作成を熟すようになると、架かっているPC橋の外観でPCケーブル配置が透けて見えるような気がしました。
当時、外ケーブル工法の採用が広がり、その設計手法に対する研究や解析が盛んに行われていました。私も外ケーブルにより補強されたPC桁の載荷試験に立ち会う機会があり、外ケーブル補強によりたわみは回復するものの、剛性への寄与はわずかであったことを記憶しています。
ある時、現場においてラーメン橋脚の一部にひびわれが生じたため、その原因と過程を調査する業務を担当しました。上部コンクリート荷重による内部鋼材の応力度の変化、剛性低下による他部材の応力増加を荷重漸増解析により求めました。会社としてはひびわれ処理を含めて現場が中断してしまったため損失となりましたが、コンクリート構造の特性と解析手法を理解することができ、個人的に得た知識としては非常に有益なものでした。大学時代に梁の断面力を求める方法、断面力から断面応力を求める方法を学んだのですが、あくまでも公式として覚えたものは、実は断面力と断面応力の算出する過程で深く関連していることをこの時に理解しました。
2005年より宮崎の共同技術コンサルタントに勤務します。新設橋梁の詳細設計をすることもありますが、主に既設橋の定期点検や補修設計業務に関わっています。橋梁の定期点検では、国道218号に架かる青雲橋や波瀬大橋などの鋼橋の点検もしました。トラス橋は部材を目視確認できるため、荷重の伝わり方が明瞭で、PC橋に比べると補修方法も容易に感じます。コンクリート橋については、富士ピーエス時代に施工現場で直接目にした「施工不良」や「施工の都合上生じた変状」を定期点検の橋梁で目にすることがあります。施工を知っているからこそ「施工不良」の多くは許容できるものであり、然るべきものと考えています。また、設計において考慮すべきものもあり、新設橋梁の設計において発注者に提案するように心掛けています。
橋梁長寿命化修繕計画の策定業務において、大学時代の恩師である中澤隆雄先生にご指導・助言を頂き、弊社とQTネットにより立ち上げた「宮崎インフラモニタリング研究会」においては会長に就任していただきました。次回は、現在も実橋のモニタリングを自ら行ってバリバリの現役選手でおられます中澤隆雄先生にバトンをお渡しいたします。