橋梁との関わりについて

水野 寿洋国土交通省 関東運輸局 鉄道部
技術・防災第一課長
水野 寿洋

鉄道総合技術研究所(以後「鉄道総研」)の仁平達也様よりバトンを受けました国土交通省関東運輸局の水野寿洋です。過去の執筆された皆さまの記事を拝見させて頂くと、皆、橋梁のスペシャリストばかりで私で勤まるのか心配になりましたが、私なりに橋梁とのかかわりについて記させて頂きます。 私は、1994年に関東運輸局鉄道部に採用されました。以後、現在まで関東運輸局鉄道部と国土交通省鉄道局で鉄道の関係の業務に携わってきました。1年目の95年には阪神大震災が発生いたしました。ニュースで見た阪神高速や鉄道の高架橋が倒壊している姿は、これまで橋梁が壊れるなど現実として考えたことがなかった私には衝撃的でありました。 後述いたしますが、その後、鉄道の地震対策を長く担当することになったのも、あの時の衝撃、あのような被害は防がなくてはいけないという思いがきっかけになったものであります。 96年には官民交流としてJR西日本に出向させて頂きました。JR西日本では大阪環状線の高架化工事に従事させて頂きました。ここでは濃厚な2年間を過ごさせて頂きました。それまで業務で橋梁等の図面を見たことはありましたが、実物をほとんど見たこともない私には最初図面が実物のどこなのかまったく分からず、鉄筋検査一つにしても苦労いたしました。 そんなレベルの私を当時の助役、同僚、ゼネコン、コンサルの皆さまが、粘り強く支えてくれ、なんとか努めることができました。その後も含めこれが私の唯一の現場であり、携わった高架橋などの構造物には愛着があり、今でも大阪方面に行った際には現場に寄り、当時担当した高架橋等を見に行くようにしています。 JR西日本へ出向が終わった後は、現在に至るまでの大きな業務としては、鉄道橋梁の設計基準でもある鉄道構造物等設計標準(以後「設計標準」)と鉄道の地震対策があります。ともに08年頃から担当しております。 設計標準は国から鉄道総研に委託し、委員会形式で原案を作成してもらい、それを国から鉄道の技術基準として発出しています。鉄道総研に委託する前に設計標準の大きな方向性や方針を定めるのが私どもの業務であり、委員会にも幹事として参加しております。 近年の設計標準は性能照査型設計法に順次移行しており、21年にトンネル編を発出し移行が完了いたしました。設計標準については国の技術基準でもありますが、一方、標準という名のとおり、標準的な鉄道構造物を示すよりどころとしても使えるように心がけており、先人達の工夫や知恵をしっかりと受け継ぐよう進めております。 鉄道の地震対策は、①構造物を壊さない②列車を早く止める③万が一脱線しても大きく逸脱しないという3点の対策を行っています。このうち橋梁に関係するのが①構造物を壊さない対策であり、具体的には耐震設計と耐震補強です。 耐震設計については前述の設計標準の耐震設計編を12年に改訂いたしました。当初11年に発出する予定でしたが東日本大震災が発生したため、その影響を検証するため1年発出を遅らせました。 耐震補強についてはこれまで進めてきた対策の見直しやそれに伴う支援対策の創設に携わっています。耐震設計や耐震補強の効果はでてきており、近年では構造物に対する大きな被害が減少しております。 しかし現在、大規模地震が全国どこでも発生しております。今後もきめ細かな対策を行い対応していきたいと考えております。 以上が私と橋梁の関わりであります。次回については、東武鉄道の矢野哲郎さんにお願いしたいと思います。

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