橋梁デザインの縁をつなぐ

二井 昭佳国士舘大学理工学部
まちづくり学系教授
二井 昭佳

橋を好きになったのは大学3年の時、齋藤潮先生(東京工業大学名誉教授)のゼミがきっかけでした。現地で観察し歴史を調べてデザインの特徴をまとめ、写真とともに美しくレイアウトする課題で、写真の基本を教わり、カメラも買い、何度も聖橋に通ううちに「橋ってなんて格好いいんだろう」と恋に落ちました。 その後、レオンハルト先生の『Brücken』に出会い、2万円という学生にはひっくり返りそうな金額でしたが、欲求を抑えられずに購入し、橋の沼へとどんどんハマっていきました。サルギナトーベル橋にガンター橋、レマン湖畔の高架橋にセーヌ川の橋、きら星のように輝く魅力的な橋に憧れ、自分も橋を設計したいと思うようになりました。 ただ僕は、社会工学という都市計画的な学科の出身で、景観工学は学んだものの、土木系科目は全く履修していません。修士の間に2度、ヨーロッパの優れた橋を見てまわってはいましたが、そんな学生を採用してくれる会社があるのか不安でした。 当時研究室の助手だった一丸義和さんのおかげで、椛木洋子さん(当時:アジア航測)にお会いする機会を得て、感銘を受けるとともに橋への熱い思いも伝え、ありがたいことに採用していただき、椛木さんのもとでみっちり橋の設計の仕事をしました。 4年間ではありましたが、僕の橋梁設計に対する姿勢や考え方の土台は、この期間につくられたもので、最初に誰に師事するのかの大切さを実感しています。 アジア航測では、りんくう高架橋(知多横断道路)や相模原IC高架橋群(さがみ縦貫道路)をはじめとする設計に関わり、充実した時間を過ごしていましたが、当時、土木のトータルデザインを提唱していた篠原修先生(東京大学名誉教授)の考え方に惹かれ、いずれ橋梁設計の仕事に戻るつもりで、会社を辞めて博士課程に進学しました。 結果的に現職の国士舘大学に勤務することになったのですが、椛木さんはじめエイト日本技術開発、土木デザイン事務所のイーエーユーの皆さんと、太田川大橋(広島市)、西仲橋や桜小橋(東京都中央区)、税関前歩道橋(神戸市)、沼津南一色線(沼津市)、新大橋(松江市)など、また近年は他の会社の方との仕事も増え、大学勤務後も多くの橋のプロジェクトにかかわる機会をいただいています。この間、スイス連邦工科大学でメン先生のいた研究室に半年間在籍する機会を得たのも大きな糧になりました。近年は橋梁設計に携わる卒業生も多くなり、彼らと仕事をする機会も増えそうで楽しみです。 振り返ると、橋梁デザインに惹かれ、実践し続けられているのは、多くの方、多くの優れた橋との「縁」のおかげだと感謝しています。みなさんからいただいた縁を広げ、次の世代にもつないでいきたい。そうした思いもあって、井手迫さんにお声がけいただきR2SJというWebサイトで「まちづくり効果を高める橋梁デザイン」の連載もはじめました。これからも研究や実践を通じて「縁」を広げていきたいと思っていますのでどうぞよろしくお願いします。 次回は、橋を含め多くの仕事を一緒にしてきているイーエーユーの安仁屋宗太さんにバトンをつなぎます。

愛知製鋼