大日本ダイヤコンサルタント株式会社
大阪支社 技術第1部長PM技術室長補佐
西本 相忠
今回の橋歴書のバトンを頂き自身と橋の関わりについて振り返ると、工業高校で土木工学科に進学した時から橋梁との関わりが始まっています。大学院まで土木工学を学んできた中で、学生時代に兵庫県南部地震で見た高速道路倒壊等の構造物の大規模な被災状況は、将来は設計に携わる技術者を漠然と考えてきた私にとって、衝撃的な出来事であり橋梁技術者を目指した要因であります。 明石海峡大橋開通の年に、大日本コンサルタントに入社し水工部に配属になりましたが、どうしても橋梁設計をやりたい思いが強く構造部への異動を会社に願い出て、橋梁技術者の第一歩が始まりました。 設計に携わった当初は、H8道示からH14道示へと改定が進む中で、耐震設計は地震時保有水平耐力法が多く適用され、電算結果を電卓やエクセルを駆使して照査しており、構造ディテールと耐荷性能の関係を手計算で追えることが楽しく、時間を忘れ設計に取り組んできた時期でした。 また、その頃は福島県の当社福島事務所に在籍し、橋梁計画や構造検討の基礎を上司から叩き込まれてきた経験が、漠然としていた建設コンサルタントでの橋梁技術者像として輪郭を捉えられてきたのを感じました。あの時に感じた橋梁技術者像を自己実現するため、いまだ邁進中の日々です。 橋梁技術者像を創るために私が従事した橋梁の中で、印象に残る橋梁概要を紹介させて頂きます。2007年に実施した近畿自動車道と阪神高速道路を接続する守口JCTの橋梁設計では、既設橋脚の梁部材を拡幅するため、鋼殻部材を用いて接合拡幅し、大きく拡幅した拡幅梁を支柱橋脚で支持する構造を採用しました。 本橋では構造設計だけでなく、狭隘な市街地内での施工計画に対する構造対応を経験させて頂きました。山岳橋で最小曲線半径R‖30メートルの滝ランプ橋(PC2+3径間間連続ラーメン箱桁橋)の設計では、曲線橋で一般的な鋼材による腹圧力照査だけでなく、幾何条件から生じる主桁のそり応力に着目したFEM解析を反映した構造設計を行いました。 10年に担当した新名神高速道路の塩川橋は、国道173号と能勢電鉄を跨ぐ橋梁であり、下り線:支間長100㍍以上の長支間を有するPC3径間連続ラーメン箱桁橋、上り線:67メートル+31メートルと非常にアンバランスな支間長となるPC2径間連続ラーメン箱桁橋の設計でした。長支間に対するL2地震時の上部工耐力確保や不等径間長での張出し架設対策として、外ケーブル工法や波型鋼板ウェブ、カウンターウェイト側となる上部工重量対策の設計で対応しました。12年に実施した国道161号青柳高架橋設計では、プレテンションホロー桁の連結部にPC受梁を用いたSCBR工法を採用し維持管理性に配慮した連結桁の支承部構造を実現するためFEM解析の構造検証を適用しました。17年のケヤキ谷の拡幅設計では、架橋地条件から単純鋼箱桁橋にアーチ部材による補剛桁を用いた2径間化を採用しております。 次回は、ケヤキ谷橋の施工で同じ橋梁に携わる機会を頂きました川田工業の亀崎様にバトンをお渡しさせて頂きます。