次世代への期待 株式会社帝国コンサルタント
技術部構造グループリーダー
植村 一盛
父親が測量設計会社を営んでいたこと、父親の兄弟(叔父)も福井県庁の土木技術者として活躍されていたことから、半ば当然のように、建設業界へ足を踏み入れました。現在所属している会社は3社目となります。橋梁設計に携わって28年あまり、これまで北海道、東北、関東、北陸、近畿地整管内の新設橋設計、補修補強設計等を数多く経験してきましたが、物事を知れば知るほど自分の無知・無力さに気付かされるととともに、巡り会った方々のおかげで今の自分があることを痛感しています。 1992年に東京コンサルタンツへ入社し、翌年から橋梁設計のキャリアがスタートしました。入社3年目より、福井県の九頭竜川に架かる勝山橋の設計を担当しました。落雪防止のため上横構を省略した、2径間の下路ローゼ桁が特徴的な橋梁です。当時東京大学教授であられた篠原修先生とデザイナーの南雲勝志さんの指導のもと、予備・詳細設計から竣工に至るまでの3年間、ほぼつきっきりで設計する機会を与えられ、橋梁設計や景観デザインの基礎と実践をじっくり学ぶことができました。 全てが自身のアイデアではありませんが、架橋地点の地形条件に適った橋梁型式(低水路部は長スパンのアーチ、高水敷は比較的短スパンの桁橋)、アーチリブとスプリンギング部の優美な線形、寒色系ながら自然景観にとけ込む塗装色が特に気に入っています。2006年の土木学会デザイン賞授与式ではこの橋のプレゼンテーションを任され、緊張でどうなることかと思いましたが、練習の甲斐あって何とか乗り切ったことで、人前での発表に自身を持てるきっかけとなりました。 2009年から7年間は、ドーコンに所属しました。札幌に単身赴任中、再び篠原修先生から設計指導を頂く機会を得ました。旭川駅前の都市計画公園内にあり、南6条通を横断する歩道橋で、冬季はクロスカントリースキー大会のコースに使用されます。PC斜材付π型ラーメン橋に対して、主桁断面形状、桁下面の線形、圧縮斜材の形状等を入念に検討しました。 福井の実家へのUターンをきっかけに、2016年より現在の会社に所属しています。橋梁設計のほか、グループとしては一般構造物設計、斜面防災、災害復旧等も手がけています。県や市町発注の業務が大半で、比較的小規模の業務が多いですが、普段の生活圏に直接関係する事業が多く、地元貢献に対するやり甲斐と責任を感じながら業務に臨んでいます。余談ですが、地方では町内会や地域行事を通して異業種の方との濃厚な関わりも多く、仕事への活力になっています。 道路橋示方書の性能規定化により、橋の性能、設計状況、限界状態などが分かりやすく体系化されましたが、同時に設計者が判断すべき領域が広がっています。地域・社会条件、環境条件、施工条件等の与条件に対して、橋の機能性、構造性、維持管理性、景観等をどのように最適化するかが設計の見せ場であり、そのプロセスを如何に説明するかも重要です。CIMの積極活用も必須です。 一方で、働き方改革により設計に没頭できる時間が限られるなか、今後は組織を超えた、場合によっては国境を越えた情報共有や協働作業が求められるのではないでしょうか。コミュニケーションツールの活用に長けた優秀な若者達による、大胆な改革を期待しています。自身も、次世代の土木技術者が誇りややり甲斐を感じることができる環境づくりを使命として、向学心を持ち続けたいと思います。 次は、日頃から技術的・営業的なアドバイスを頂いている三井共同建設コンサルタントの追谷健吾さんへバトンを渡します。