熊本高等専門学校
生産システム工学系APグループ 教授
岩坪 要
リレーバトンを受け取りました熊本高等専門学校の岩坪です。本企画に沿うような事が書けるのか不安なまま引き受けてしまいました。私は、1996年に八代工業高等専門学校(その後、2009年に熊本高等専門学校に校名変更)に赴任して以来、鋼構造の研究を続けてきました。本稿を執筆するに際し、当然のことながら橋梁の設計を手掛けたこともなく研究だけを続けてきたためどんな話にしようかと迷いましたが、思いつくままに執筆することにしました。
○研究のイロハを学ぶ
熊本大学の構造力学研究室で鋼構造の研究が始まりました。研究室の指導教員には3名の先生がいらっしゃいました。平井一男先生からは構造力学を教わり、﨑元達郎先生からは橋梁研究の面白さを教わりました。山尾敏孝先生は海外留学から帰ってこられたばかりで講義を受けたことはなかったものの、構造解析の勉強ができるらしい、ということで山尾敏孝先生の下での研究を始めました。Fortranプログラムソースとにらめっこをする毎日で、有限要素法のことや構造解析について多く学ぶことが出来ました。また当時の研究室では耐荷力実験を数多くしており、万能試験機を用いた実験を通じて、準備、サンプリング、結果の整理まで、実験の難しさや楽しさを学びました。
○建築の鋼構造を学ぶ
赴任した当時は鋼構造と構造実験、橋梁工学の講義を担当していました。(旧)八代高専の土木建築工学科は土木工学と建築学の複合学科であるため、改めて建築の鋼構造の勉強を始めました。原理や現象は同じものの、ちょっとした言葉の表記の違いや設計基準の違いに戸惑いながらでしたが勉強になりました。また学生指導を通じて、学生からもいろいろな勉強をさせてもらいました。どのように理解させるのか、も大事ですが、興味関心をどのように広げるのか、今でも試行錯誤な毎日です。
○鋼構造を学ぶ
学生時代から手掛けてきた研究が低降伏比高張力鋼を用いた構造部材の耐荷力の研究で、この研究テーマで学位も取得しました。その後、インフラの維持管理の問題が話題に上がり始めた頃、耐候性鋼の調査で数多くの橋を見て回りました。同時に、自分で装置をつくり曝露試験も実施しながら、錆生成の勉強をさせてもらいました。何よりも日々のサンプリングが大変だったことを覚えています。これらの材料特性の研究を通じて、鋼構造の魅力を学ぶことが出来ました。実物を見るのは楽しいです。
○自然災害から学ぶ
2016年には熊本地震が発生し、直下型の地震というものを体感しました。避難所で家族に覆いかぶさったあの時の揺れは今でも忘れていません。また、2020年には豪雨のために球磨川が氾濫し、多くの橋梁が流失する事態になり現在も不便な暮らしが続いています。これらの災害調査をしていくと、自然の力の強大さを感じますが、同時に対策する限界も感じました。これらの経験を生かした研究を現在も継続しています。
○まとめ
振り返ると、常に学んできており、これからも学び続けるんだろうと思いました。特別なことではなく、学ぶ行為は人間が持っている本能の一つであろうと思います。子供の頃に描いていた夢みたいな技術が実現してきています。未来への期待感で、ますます学びは止まりません。
次は川田工業の辛嶋景二郎さんです。