知覚動考(ともかくうごこう)

増田 貴充株式会社オリエンタルコンサルタンツ
関西支社副支社長(兼)構造部部長
増田 貴充

平成5年、大きな橋の設計を希望し、オリエンタルコンサルタンツに入社しました。 入社して30年、あらためて振り返ると、非常に恵まれた橋歴であったと思います。 入社後、中部支社(名古屋)に配属され、最初に従事した橋梁設計が名古屋ガイドウェイバスの下部工の設計でした。Y字形の特殊な形状を有する橋脚であったため、FEM解析を用いて橋脚梁の応力を算定しました。延長が長い路線でもあったため、他のコンサルタントの設計技術者と連携しながら設計を行いました。 経験がない中、自らの好奇心もあり、自分が納得いくまで計算をさせてもらうことができ、そのときの経験が現在でも活かされていると思います。 また、平成7年には兵庫県南部地震が発生し、耐震設計が大きく見直されました。  新しい耐震設計について道路橋示方書が手垢で真っ黒になるまで読み込んで、先輩や同僚と議論しながら設計を行いました。 その後、PCエクストラドーズド橋の設計、災害復旧に関連した架け替え設計、新東名高速道路の新技術・新工法を活用した設計、PC吊床版橋の設計等、いろいろな橋梁の設計に携わることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。 息子にも、「お父さんが設計した橋だよ」と自慢することができ、仕事が忙しく、息子とのコミュニケーションが不足する中でも、父親としての威厳を保つことができました。 また、国の詳細設計業務で管理技術者として従事すると橋歴版に名前を記載してもらえますが、初めて名前が載っているのを見た時には自分の作品ができたような気持ちになり、入社当時に描いた「地図に残る仕事」を実現することができたと感じました。 数年前に「知覚動考(ともかくうごこう)」という言葉を知りました。 自分の職業人生を振り返ると、非常に忙しく、まずは動いてみないと業務が進んでいかない環境だったため、自然とこの言葉が意味する行動ができていたのだと感じています。 現在は、就業環境改善が掲げられ、厳しい時間制約の中で、何とか結果を出そうとして頑張っている若手技術者に対してこの言葉を伝えています。 これは「知って、覚えて、動いて、考える」成長プロセスを現した言葉ですが、知って覚えたことをすぐに行動に移す、「やってみた方がよさそうだ!」と思ったことは、まずは行動してみる。行動した後に、「やってみてどうだったか」を考えるというサイクルが大切だと実感しています。 とくに、現代の仕事の流れは速く、変化が激しい環境の中では非常に重要な行動だと思っています。 現在は組織をマネジメントすることが主な職務となっていますが、若手技術者には夢のある仕事であることを伝えるとともに、多少不安があったとしても、やってみたいことに勇気を出して動き出せる技術者になってほしいと日々考えています。 今後も、仲間と共に橋梁の規模、新設・保全等に関係なく、橋梁に関する仕事を継続、伝承していきたいと思います。 次回は、関西支社に異動になってから、大変お世話になっている大日本ダイヤコンサルタントの西本相忠様にバトンタッチさせていただきます。

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