パシフィックコンサルタンツ株式会社 九州支社 交通基盤事業部
土田 隆司
「橋の設計」という仕事に携わり26年になる。主に道路橋の設計を担当してきた。大きな橋から小さな単純橋も、鋼もコンクリートも、上部工も下部工基礎工も。桁橋が多い。道路橋示方書に従い、である。道路橋示方書に従いということは、最近になって、整備水準に適合した安全性を有する橋の設計をする、ということが理解できてきた。ここまで教えていただいた幾多の方に感謝である。これまでの私の歴史を少し紹介する。
大学の土木工学科に入った段階で、仕事にするなら「橋の設計」と決めていた。研究室の教授がコンサルタント出身だったため、「設計」がしたいのであればコンサルタントになるべきとのアドバイスを受けて、パシコンにお世話になることにした。
平成4年入社当時はちょうどパソコンが導入され始めたころでもあり、自ら汎用プログラムや表計算を駆使し、断面力算出、安定計算、応力計算を繰り返し行い、徐々に道路橋示方書や各種計算方法を理解・習得した。当時横浜環状2号線整備事業のなかで、ちょうど道路設計や構造物設計が最盛期になりつつあり、自ら志願してその中の陣ヶ下高架橋の設計スタッフに入れていただいた。陣ヶ下高架橋は、自然散策路公園内の橋梁で、デザインが魅力的であった。船底型の上部工断面が円柱橋脚にサークルハンチで結合される複雑な形状であるが、そのハンチが応力集中を緩和しており、安定感のある造詣は力学的合理性があると認識したものであった。形を具現化するための設計の難しさを感じ、さらにそれが形になってゆく面白さを堪能した。
平成15年からは、国土技術総合研究所の橋梁研究室(道路構造物管理研究室)に交流研も含めて3年通う機会を得た。道路橋設計基準の性能規定化に関する研究がメインテーマであり、その中で、床版の耐久性能を直接照査する、疲労設計法に関して種々検討を行った。橋梁研究室では、研究テーマでもあったため「橋の設計」に関する全ての事項(材料調達、設計理論(作用と抵抗)、施工品質の確保、維持管理方法、安全率等)に関して勉強させていただいた。設計を始めて10年での橋梁研究室へ参加で、橋の設計もそうだが、整備水準(安全性)の確保という土木構造物の設計の根幹をあらためて再認識したととともに、橋の品質確保が国土の安全性の確保を意味する重要性を理解できた。
その後の携わった設計の中で感慨深い橋の設計の一つとして、東京ゲートブリッジがある。若洲側海上アプローチ橋の設計において、箱桁のずれそり応力の直接評価によるダイヤフラムの省略や、FEMを活用した鋼床版横リブの設計や柱頭部剛結部の設計に携わった。モデル化の妥当性や荷重のかけ方、評価(局部応力)の判断から材質、板厚、溶接形状に関しては、その妥当性の説明に苦慮したが、最終的には検討会の先生方に評価していただきながら決定した。新技術新工法の適用に関して、材料調達や製造・製作、使われ方に至るまで検討し、それを意思決定するプロセスの一つに関して勉強させていただいた設計であった。
コンサルタントは、橋の設計においては、構造、形状を決定して図面化してゆく最も興味深い(面白い)ところを担っていると思っている。道路計画図面を見ていると、自ずと橋梁形式が浮かぶが、その中で何をこだわるのか、それをどう具現化してゆくのか、「橋の設計」でも面白いところである。この道に進むべきとアドバイスしてくれた教授には本当に感謝である。この面白さ、その奥深さに関して、今後も自ら今後も研鑽するとともに、後輩たちに伝えてゆきたいと考えている。
次は、大学の同級生である、首都大学東京の中村一史先生にバトンをつなぎます。