極東興和株式会社
技術本部 副本部長 兼 技術企画部長
谷 慎太郎
私は広島に本社のある極東工業(現・極東興和)へ1994年に入社しました。 土木関係の職に就くにあたっては、構造物の外観が見えやすく風景として映える橋梁に興味を抱き、少々安易な考えで入社試験を受験しました。入社後、縁あって設計部門の配属となり、その後30年近くPC橋上部工の設計に携わることとなりました。 学生時代、構造力学が最も苦手な科目の一つでしたが、設計業務に携わる上で、それでは全く話にならないことに入社後ようやく気付き、しばらくは業務の傍ら構造力学の問題集で一から勉強し直す日々を過ごしました。 入社3年目に、高速道路橋の上部工詳細設計の担当者となり、本格的な設計に携わることとなります。 この業務では、PC連続箱桁橋にPC合成床版工法を適用したのですが、同様な事例はまだ少なく、上司・先輩の指導を仰ぎながら業務を進めました。 入社5年目に、私の礎の一つとも言える業務に携わりました。 それは新名神高速道路のPC多径間連続箱桁橋の設計です。 この業務は共同企業体での橋梁工事の詳細設計であり、現場事務所に設計室を構えて業務を行いました。 対象橋梁は、プレキャストセグメント工法による広幅員箱桁橋であることや、外ケーブル工法の採用、および一部の橋梁で波形鋼板ウェブ構造を採用する等、今では多く採用されている技術ですが、当時では最先端といえる技術が〝てんこ盛り〟の状態でした。 私は、主にFEM解析の担当者として携わりました。 当時は、パソコンの性能も低く、一つの解析を実行するのに夜通しとなることも多く、夜、解析実行して宿舎に戻り、朝、事務所に行くとエラーで解析が停止していて、また振り出しに戻るということは日常茶飯事でした。 この業務を通じて、様々な新しい知識を得たことも貴重な経験ですが、社外の技術者の方々と知り合えたことが、今の私にとって一番貴重なものだと感じます。 その後も様々なPC上部工の詳細設計を担当した後、2015年より、高速道路リニューアル工事における鋼橋の床版取替の設計に数件携わりました。 これらの業務においては、構造性に関する検討はもちろんのこと、既設構造物との調整・適合に関する検討や、限られた期間で工事を完了させるための工夫、および更新後の構造物に対する維持管理性や耐久性への配慮等、これまでの自身の知識と経験をさらに発展させた思案が必要でした。 この業務では、発注者の西日本高速道路株式会社様や管内で施工する他社の技術者の方々と、幾度に渡る意見交換を重ね、試行錯誤しながら業務を進めました。これも大変貴重な経験であったと思います。 振り返ると、私の橋梁技術者としての歩みは、高速道路橋の建設および維持管理に関する技術発展やトレンドとともにあり、それらが「私を構成する要素」と言えます。 現在では、設計実務に直接かかわることは少なくなり、部下・後輩の指導や管理職として時間を費やす日々で、新人の頃以上に四苦八苦していますが、橋梁技術者としての自覚を持って、技術の伝承・後継者育成に尽力したいと思います。 次に紹介させていただくのは、日本ピーエスの松本正之様です。よろしくお願いします。