神戸大学大学院
工学研究科市民工学専攻 准教授
三木 朋広
2004年に博士後期課程を修了し、私の研究キャリアが始まりました。米国留学、東京工業大学助手を経て、現在の地、神戸大学に着任しました。 現在まで一貫してコンクリート構造に関する研究を行ってきましたが、そのはじめは学生時代の東工大二羽淳一郎先生のご指導のもと、コンクリート構造のせん断や時刻歴応答解析に関する研究でした。当時はコンクリート構造を対象とした非線形解析モデルの開発を行いました。土木学会の委員会では、若気の至もあり、大先輩の構造設計者である北武コンサルタントの渡邊忠朋さんにも意見するような、怖い物知らずの対外活動の始まりでした。 07年に神戸に拠点を移した後は、鋼材腐食、アルカリシリカ反応など、構造物の維持管理に研究テーマが拡がりました。関西では、京大宮川豊章先生、大工大井上晋先生、本学森川英典先生にご指導いただきました。二羽先生のご縁から、着任早々には立命館大児島孝之先生にも迎えられ、公私ともに大変お世話になりました。 橋梁に関する活動では、様々な技術者とご縁がありました。例えば、神戸大OBの阪神高速金治英貞氏、本稿のバトンを頂いた西日本高速道路大城壮司氏からは、兵庫県南部地震の復旧状況や、現在の高速道路のあり方、改築等工事の課題解決まで、多くの教えを頂きました。最近では、国交省近畿地方整備局の研究会でPC橋のデジタルツインによる構造性能評価について、建設コンサルタント、PC橋の施工会社の方々と一緒に取り組んでいます。限られた紙面ではご紹介できないほどの多くの方々とご縁があったことも触れさせていただきます。 時間を戻して、米国留学は博士修了後に加え16年にも機会を得ました。留学中はカリフォルニア大学サンディエゴ校のBenson Shing教授のもと、塑性理論を用いた材料構成則の構築といった基礎研究に加え、道路橋橋脚の地震による損傷制御を目的としたプレキャストPC橋脚に関する実験・解析的研究にも関わりました。後者は現在の私の大きな研究テーマのひとつです。 米国コンクリート工学会(ACI)とのつながりもあります。建築構造設計者が主ですが、建築物の耐震、既設構造の性能評価、プレキャスト構造の適用まで、非常に幅広い実務的な情報交換ができています。情報伝達は、内容の良否はもちろんですが、誰がどのような熱意を持って発信しているかも相手に伝えるための重要な要素であると学んだ場です。 大学における研究では、構造物のあるべき現在・将来の姿を思い浮かべながら、限られた情報の中で検討すべき課題を抽出して、それを一つひとつ丁寧に検討しているつもりですが、ときに現場ニーズから離れてしまうことがあります。私の研究の興味がコンクリート構造であることから、「人とコンクリート」によるつながりと運命的な広がりが情報の集まるところとなり、また、世界に向けて情報発信することで、多方から良い情報が集まる循環を生み、本当に解決すべき課題に取り組むことができています。 今後は、関西から世界へ積極的に情報発信を続けるとともに、技術伝承に加えて、熱意もあわせて広げるべく、後進の育成にも尽力できればと思っています。 次は私の関西におけるご意見役である、川田建設の大久保孝さんへバトンを渡します。