橋梁の維持管理に携わって

田中智行中央コンサルタンツ株式会社
福岡支店 技術部 課長
田中 智行

私は1995年3月長崎大学大学院を修了、4月中央コンサルタンツに入社し、それから24年間様々な橋梁の計画・設計、橋梁の点検・補修補強設計及び橋梁の維持管理に数多く関わってきました。ここでは、特に印象に残っている3業務について記載いたします。 業務1は、熊本県人吉市から宮崎県えびの市を経由して宮崎県都城市を結ぶ道路である国道221号に架かる人吉ループ橋の3橋のうちの昇雲橋の耐震補強検討を実施しました。本橋は1977年3月に竣工であり、1995年1月に発生した兵庫県南部地震に伴い耐震性評価の確認が必要となりました。 橋脚耐震補強検討では、中空断面を有する鉄骨鉄筋コンクリート構造の高橋脚という特殊な橋脚であったため、高橋脚の破壊状況、耐力、じん性率を十分把握するため、模型載荷実験を行い、また、地震時挙動を正確に把握するために非線形動的解析を行いました。その結果、作用力が保有水平耐力を下まわり補強不要と判定できました。 業務2は、1960年竣工の3径間単純合成活荷重鈑桁橋(橋長L=67・0m)について、調査の結果、RC床版にひび割れが数多く見受けられ、床版厚も基準を満足していませんでした。 耐荷力照査結果においても床版配力筋に大きな応力度超過が見られ、床版補強が必要と判断しました。床版補強は、今まで上下面増厚、鋼板または炭素繊維シートの接着が多く用いられてきましたが、これらの工法は補強後の床版変状の把握が困難になる点が問題点でした。 そこで縦桁増設工法を採用することにより維持管理を容易にし、併せて縦桁に新材料のガラス繊維強化プラスチックを用いて軽量で、鋼板と比べ耐食性に優れた床版補強設計を行いました。桁重量が鋼I桁の1/4であるため、今後床版補強を行う上で有用な工法であると思います。検討にあたっては、九州大学(当時)の日野伸一先生にご指導を仰ぎました。 業務3は、上部工形式4径間連続鋼箱桁であり、下部工形式は鉄筋コンクリート小判型橋台および橋脚、基礎工形式はニューマチックケーソン工法であす。 検討にあたっては、九州大学(当時)の大塚久哲先生にご指導を仰ぎながら、橋脚の地震時保有水平耐力法、および非線形動的解析による検討の他、支承の免震化、橋台パラペットおよび橋台背面土の抵抗を考慮した橋梁全体系の耐震検討を行いました。 その結果、水中施工となる橋脚補強は行わずに既設支承の免震支承への取り替えのみにより、所定の耐震安全性を確保することが可能と判断できました。その詳細は、橋梁と基礎、pp.33|39、2001・10に記載しています。 高度経済成長期に集中的に整備された社会資本の急速な老朽化の懸念から、社会資本の維持管理・更新は、大きな問題となっています。 このよう中、補強・補修設計等の数多くの維持管理業務に携わってきました。筆者が以上のような貴重な経験ができたことは、先生・先輩方々からの御指導・御助言の賜物であると深く感謝しています。今後は、教わってきた様々な知見を若手技術者へ伝承していきたいと考えています。 次回は、宮崎県で橋梁の設計、維持管理業務等にご活躍する黒木隆二氏にお願いします。

愛知製鋼