日本ファブテック株式会社
橋梁事業本部 設計統括橋梁設計部 設計二課係長
山本 将士
私がこの業界に進むきっかけとなったのは、土木関係の仕事をする父や叔父の影響を受けて、地元の和歌山工業高等専門学校環境都市工学科へ入学したことが始まりです。卒業後は、地元から離れたいという気持ちと進学を希望し、山口大学社会建設工学科へ編入学しました。大学では、麻生稔彦先生の研究室で大学院修了までお世話になり、鋼橋について詳しく知るきっかけをいただきました。また、山口県内に架かる錦帯橋、関門橋や角島大橋など色々な形式の橋梁を目にする機会があり、特に鋼橋への関心を持つようになりました。 2006年に鋼橋メーカーを志望し、当時の片山ストラテック(現:日本ファブテック)に入社しました。1年間の研修期間を経て、2年目に設計部へ配属されました。初めて担当したのは、大阪市の道頓堀川に架かる「浮庭橋」という吊橋形式の歩道橋でした。デザインコンペにより決定した構造で、構造設計と意匠設計の双方に配慮して照査する必要がありました。何もわからない中で、上司や多くの先輩方にご指導いただきながら、一つ一つやり遂げたことは今の原点になっています。 入社3年目に、当社が保有する鋼コンクリート合成床版「パイプスラブ」の設計や研究開発を担当することになりました。当時は、施工実績も少なかったため、パイプスラブの採用に向けて上司に協力を仰ぎながら尽力しました。また、ずれ止め構造の合理化を図った改良実験やFEM解析による輪荷重走行試験の検証などに従事しました。この時に、共同開発した駒井ハルテック(当時:駒井鉄工)やIHIインフラシステム(当時:栗本橋梁エンジニアリング)の開発担当者の方々と交流する機会が得られ、貴重な経験をさせていただきました。現在に至るまで、パイプスラブを通じて色々な面で大変お世話になっています。 入社5年目に、近畿自動車道本線から高架下のパーキングエリアへと繋がるオフランプ橋を新設する改築工事の詳細設計に携わりました。供用下における撤去拡幅工事で、既設桁の耐荷力照査や施工ステップに配慮した新設拡幅桁の設計を経験することができ、現在の詳細設計を進める上でも礎となっています。また、この時期から、場所打ちPC床版と合成床版の接合や延長床版の検討、ロードヒーティングケーブルを埋設した床版の性能試験などを担当させていただき、床版に関する知識を深めることができました。 最近では、既設道路橋の床版取替工事への適用を目指し、清水建設と共同で軽量コンクリートを用いたプレキャスト合成床版の開発を行いました。近畿大学の東山浩士先生にご指導をいただきながら開発担当の一員として従事し、2021年に「SLaT―FaB床版」として製品化を実現しました。実績はまだありませんが、床版取替工事が増える中で、本製品の特長を活かした適用先があると考えています。 現在、土木学会の複合構造委員会や日本橋梁建設協会の床版小委員会床版技術部会に参加させていただき、活動の中で多くの有識者や技術者の方々との貴重な出会いが増えました。また、大阪工業大学の大山理先生のもとで合成床版のクリープおよび乾燥収縮に関する研究をさせていただいています。 仕事の繋がり、人との出会い、色々な経験をさせてもらっており大きな財産となっています。まだまだエンジニアとしては半人前で、学ぶべきことが多いのですが、鋼橋の発展のために少しでも貢献できればと思っています。 次は、高専時代の同級生で鋼鉄道橋の分野でご活躍されている西日本旅客鉄道株式会社の北健志さんへバトンをお渡しします。