大事に長く使お

平良 一夫

株式会社セラアンドアース
一般社団法人無機質コーティング協会 代表
平良 一夫さん

「将来の子どもらのために、よい社会を残していけるようにしたいやんか」 この思いでずっと取り組んできた。「環境に悪いもんは人間にも悪い」。だから有害物質は使わないし、代替材料がないのなら極力使用量を減らす方法を考える。同時に並行して、代わる新材料を開発することに注力する。 自身の子育てのなかで、学校のPTAや町内会、こども会などのかかわりができたころ、より思いを強くするように。 「(害のあるものを簡単に使って)そんなんして儲けたらあかんがな」 そして、シンナーなどの溶剤も極力減らした無機塗料の開発に取り組むようになる。 当初は業界でも「無機塗料ってなんなん?」。緒に就いたばかりで、有機塗料と同様の取り扱いや認識ではうまく施工できない。そのつど駆け付けた。 「正直に謝り。正直に伝える。嘘をついたら、そこですべて終わりや」 工事が始まる前には現場で施工研修を開き、無機材料の性質や、施工法を説明して回り、体験してもらう体制を整えた。 「少しでも環境にええもんを」追求し、そして失敗したら「正直に謝り、嘘は決してつかない」、この積み重ねで、今の信頼がある。 昨今SDGs(持続可能な開発目標)を旗印に、このままでは持続不可能になる従前の仕組みを変えていくのが、今を生きる我々の責務になっている。 「なんや話が合う人らが増えてきたで」 ただ、「環境にええもんとそうでもないもんがあれば、だれしも環境にええもんがええがな、でもな、コストが高いとなると、そうでもないもんでも仕方あらへん、となる」だから「今ある橋に無機塗料を塗って、今あるもんを大事に長く使お、と長寿命化を言うてますねん。環境にも財布にも優しいやろ。な」。 生まれ育った尼崎で73歳。 (根津寿子)

愛知製鋼