鉄建建設株式会社
東京鉄道支店 JV八ツ山作業所 副所長
竹家 勢二
この執筆の依頼を受け現在までの経歴を思い返してみると、早いもので社会人になり28年目となります。 1996年に入社以来、出向や営業部で勤務したこともありましたが、そのほとんどを現場での業務に従事し過ごしています。入社して最初の約7年間は地下鉄工事、下水道のシールド工事、地下構造物の現場に携わっていました。 8年目になって品川・田町駅間に位置する札の辻橋架替工事に従事することになりました。この現場は在来線と東海道新幹線を跨ぐこ線橋の架け替え工事です。 橋梁を架設する線路上空作業は、夜間電車が運行しない時間帯に線路閉鎖、き電停止手続きを行い、約3時間という限られた時間の中、架設途中の橋梁を安定した状態で作業を終了させ線路閉鎖し、き電停止作業を解除するといったもので、営業線にからむ橋梁架設の難しさと鉄道工事の特殊性を学ぶことができた現場でした。 これが私の橋歴の始まりとなりました。その後、さらに営業線を跨ぐ宮城県の宮城野こ線橋架替工事、また、福島県の桑折こ線橋新設工事に配置技術者として従事しています。 これら3件の橋梁現場すべて難易度が高く印象に残っていますが、特に2011年に従事した宮城野こ線橋架替工事の旧橋撤去は印象に残っていますので、ご紹介したいと思います。 宮城野こ線橋は仙台駅北側に位置し、地上のJR在来線と高架の東北新幹線に挟まれた道路橋であり旧橋は1961年に設置されたものです。 旧橋撤去工事は在来線直上であり、かつ新幹線直下であるばかりか商業ビルも近接し、極めて狭隘な空間であり、一般的な桁撤去工事とは条件が大きく異なりました。 当初計画では既往資料から桁重量を約103トンと想定し、650トンクローラークレーンでの撤去を予定していましたが、桁重量測定の結果、想定を30%上回る約134トンとわかり、クレーン能力が不足してしまい、桁揚重が不可能とわかりました。そこで改めて施工計画の見直しを行い、まず桁重量を650トンクレーンで揚重可能な水準まで削減する検討を行いました。しかし、この作業には在来線上空でガス切断が不可避となり、火花などで鉄道施設損傷の危険性があること、また切断に伴い桁転倒や落橋の懸念もあることから、これは断念せざるを得ませんでした。 そこでクレーンのランクアップを検討した結果、国内最大級の1250トンクラスのクレーンであれば計画の作業ヤード内で揚重可能なことがわかりました。 これにより作業計画の深度化を図ることとし、当時国内に3台しかなかった1250トンクレーンの調達、旧橋の旋回直下に入る道路の通行止め規制許可の協議や在来線の線路閉鎖、さらにき電停止時間約3時間で全作業を終了させるサイクルタイムの検討などを約7か月かけて行いました。 無事に桁撤去を終えて始発列車の運行を確認し、またいつもの日常へ戻った時には、安心感と達成感から、とてもうれしかったことを今も覚えております。 現在私は仙台市在住で東京に単身赴任しております。月数回の通勤は架設した仙台の橋を渡って福島の橋の下を新幹線で通過し東京の橋の下を在来線で通過し、いつもの日常を送っています。 この『いつもの日常』を利用者の皆様に提供できるように、仕事に誇りを持ってこれからも取り組んでいきたいと思います。次のバトンは、宮地エンジニアリングの野澤栄二様にお願いしたいと思います。