専門分野を定めた契機

牧田 通中日本高速道路株式会社
名古屋支社四日市工事事務所工務課長兼専門副主幹(橋梁担当)
牧田 通

約20年にわたり高速道路の建設や維持管理の仕事に携わってきた。橋梁以外の構造物に関する仕事もあったが、希望したこともあり橋梁に関する仕事が最も多かった。学生時代から好きだったというわけではなく、主に会社で仕事を経験する中で橋梁に興味を覚えていったように思う。元々大学では建築を学びたかったのだが受験に失敗し、志望を変えて土木を学ぶことになった。大学ではどちらかといえば計画系の分野に興味があった。 現在は橋梁やコンクリート構造物の建設や維持管理に興味があり、学会に所属するなどして様々に勉強しているが、自らの専門分野を橋梁と定めることとなった契機として、会社の制度を利用したスイスへの留学があったように思う。会社の海外留学制度は自分が希望する内容の勉強を希望する大学で実施させてもらえるもので、特に大学の選定は非常に悩むものであった。当時は橋梁の維持管理に関する業務に携わっており、勉強するのは橋梁やコンクリート構造物の維持管理とすぐに決めることができたのだが、留学先を米国にするか欧州にするかで悩むところがあった。 しかし、学生時代にドイツやスイスの著名な大学教授兼橋梁技術者が執筆した本や、彼らが設計した橋梁に関する本を読み、橋梁の設計に関する考え方に感銘を受けた記憶があり、欧州、それもドイツまたはスイスの大学に行くことができればと考えるようになった。すでに修士号を取得していたこともあり、会社の上司のアドバイスも参考にして博士号を取得すべく受け入れてもらえる大学を探したところ、その上司の支援により橋梁の維持管理を研究するスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のEugen Brühwiler教授を紹介してもらうことができた。様々な紆余曲折を経て、2009年にEPFLの構造工学専攻の博士課程に入学しBrühwiler教授の研究室に所属させてもらえることとなった。 Brühwiler教授は超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC)を用いた既設構造物の補修・補強工法の研究・開発を1999年より実施しており、その中の研究テーマの1つであるUHPFRCおよびUHPFRCとRCの合成部材の疲労に関する研究を担当させてもらえることとなり、これが博士研究の内容となった。 疲労試験は2百万回で載荷を終了することが多いが、最低でも1千万回の載荷を基本として、時に2千万回前後まで載荷したため、手間はかかったものの貴重なデータが得られたのではないかと思う。 博士研究に加えて博士課程の学生は教授のコンサルティング業務を手伝うことを求められ、あるPC箱桁橋の評価およびUHPFRCによる補強設計に主担当として携わる機会があった。当時は既設構造物の評価および補強設計に関するスイスの基準(SIA269)が案の段階で、UHPFRCを用いた補強設計の基準も無く、様々に試行しながらこの業務に取組んだのだが、博士研究を実施する上で、またその後の日本における会社業務等に携わる上で勉強となった。 以上、橋梁に専門分野の方向を定める契機となったスイス留学について述べさせていただいた。この経験を忘れずに、今後も橋梁に関する仕事に携わることができればと思う。次は、大学の同級生であり、仕事でお世話になっている昭和コンクリート工業の櫻井義之様にバトンを渡します。

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