株式会社安部日鋼工業
技術工務本部 橋梁技術部課長
國富 康志
私は2001年に安部工業所(現:安部日鋼工業)へ入社しました。当時の私は橋に対して特別な興味を持っておらず、この橋歴書へ執筆されている方々に比べると橋への意識は低いものでした。 そのため、執筆を受けるべきでは無いと思いましたが、改めて自分のキャリアを振り返ってみると、プレストレストコンクリート(以下、PC)と橋を通して多くの方々と出会いご指導いただけたことで、今の自分があることを痛感しました。そのため、拙文しか書けず恐縮ですが、関わっていただいた皆様への感謝の意を少しでもお伝えできたらと思い執筆させていただくことにしました。 弊社はPC構造物の施工会社で、私が入社した当初はPCタンクとPC橋を主力としておりました。入社時、タンクと橋梁のどちらの現場を希望するか聞かれましたが、冒頭にも記載した通り入社当時は橋に興味が有ったわけでもなかったため、「どちらでも良い」と答えました。その回答に対してどう判断されたかは不明ですが、橋梁の現場配属を言い渡され私の橋梁との関りが始まりました。 現場が始まるまでの半年程度は設計で橋梁の勉強をすることになったのですが、実際は橋梁設計の勉強ではなく、当時、配属支店で導入したばかりのFEM解析ソフトの使用方法を勉強することから始まりました。 また、入社直後に大学時代の恩師である中川健治先生から博士課程へのお誘いを受け、会社へ相談したところ快諾していただきました。その関係で現場配属が中止となり、本社への異動が決まりました。大学では破壊力学を勉強し、仕事では泉満明先生との共同実験である「PC鋼材の付着定着長に関する研究」に携わらせていただきました。泉先生からは、実験のノウハウやPCの専門知識を教えていただきました。 これらの経験を通じて、PCの概念などについて理解を深めるとともに、構造物に発生する応力を自分でコントロールできるPC技術と、その技術を活用しているPC橋梁に魅了されていきました。 博士課程修了後は、橋梁の現場に配属されました。現場では、会社の先輩や下請け業者の皆さまから、仕事の段取りの重要性や責任感、コミュニケーションについて教えていただき、あの場で培った経験は今でも自分の仕事に対する核になっています。 直近の10年程度は社外活動に多く関わっています。社外活動では、PC橋に関連する材料や施工方法、点検方法など多くの共同研究などに参加させていただき、多数の既設橋梁調査や国内初の試験にも携わるなど貴重な経験をしてきました。また、社外活動で関わった方々は、会社の壁を越えて親身にご指導いただき、本当に多くの皆様に支えられ成長させていただいた社会人生活だと思います。 実名を挙げるとキリが有りませんが、これまでご指導いただいた皆様には感謝しきれません。自分が得た知識や経験を次の世代へ繋いでいくとともに、少しでもこの分野の発展に貢献できるよう、今後も多くの方と繋がり成長していけたらと願っています。 次は、地元(岐阜)の社外活動でご一緒させていただき、橋梁に限らない知識の広さと統率力の高さや人間性にいつも刺激を受けている大日コンサルタントの牧野徹さまにお繋ぎ致します。