パリオリンピックが先月26日~8月11日の日程で行われたが、特に初日の開会式には様々な意味で注目が集まった▼世界的スターの登場、物議を醸す「最後の晩餐」のパロディ、生首を持つマリー・アントワネットなど、そのパフォーマンスに眉をひそめる向きもあったようだが、世界史に刻まれる市民革命により貴族や一部聖職者を放逐した国に相応しい演出とも思う▼何より各国選手を乗せてのセーヌ川における船団パレードはオリンピック史上初という。「芸術の都」と称されるパリらしい独創だ▼もともとパリはセーヌ川の中州であるシテ島から発展したという。フランス北部を流れ、780キロに及ぶ長大河川は、人・モノの輸送に大きく貢献してきた。川への思いもことの外、強いということだ▼パレードはオステルリッツ橋を出発、シテ島、サン・ルイ島を巡り、約6㌔を航行、イエナ橋に至り、そこから開会式の締め括りとなるトロカデロ広場に臨む▼パリ市内だけでもセーヌ川には37橋が架かり、その多くは古い姿を残す名橋揃いだ▼橋には観客たちが鈴生りとなって選手たちに手を振る。原則、入場無料というのもスポーツを身近にする国柄であり、これもオリンピック史上初という。粋な計らいに脱帽する。