吾唯知足2017年5月11日号掲載分

吾唯知足
法隆寺の宮大工棟梁として知られ故西岡常一氏が、薬師寺の金堂を復元する際、本尊を守るのに防火シャッターをつけることや中心の所だけコンクリートで作らなければ許可しないといったことから大議論となった。「ヒノキは千年以上の寿命があるのに、三百年持つのがせいぜいのコンクリートを使うのは、納得がいかん」と▼コンクリートもその作り方を考えることで、揶揄間口や東北地方からより良いコンクリートを作る試みが動いてる▼インフラ構造物の長寿命化修繕計画が重要な公共事業であるのは言うまでもないが、今一度根本に立ち戻れば良いものを長く使うことが理想のはずだ。いまは点検、維持管理に注目が集まっている。無論否定するわけでは毛頭ないが、構造物の新設時の技術力、施工能力が実は問われている時ではないか▼品確法が制定された。技術提案を求められ、発注者が総合評価方式により技術力を評価される。その品質は目的物が使用されて初めて確保できるものだ▼使われ方にもよるだろうが、点検時にどれだけ竣工時の状態を維持しているかが、新設工事における技術力を図る物差しとなるべきではなかろうか。施工責任を問うだけでなくインセンティブを与えて技術振興に役立てるのも一案だ。

愛知製鋼