日々勉強

公益財団法人 鉄道総合技術研究所 小林祐介 公益財団法人 鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部 鋼・複合構造 主任研究員 小林祐介さん

本稿の過去の記事を読むと,橋梁分野に進むきっかけとなるような橋に魅了された思い出から書き始められている方が多いように思います.私は,修士課程での研究室が橋梁研で,当時の指導教官である三木千壽先生(現都市大学学長)に博士課程まで進学することを勧めて頂いたことが,橋梁の研究者になったいきさつです.なってはみたものの,本稿に登場されているような皆様に何とか追いつけるよう,四苦八苦しながら勉強している毎日で,その中で日増しに橋に魅了され続けています.

修士・博士課程の5年間では,橋梁のモニタリングシステムについて研究させて頂きました.3橋梁に何百というセンサを設置し,大学でリアルタイムに橋梁を監視できるシステムでした.Weigh-In-Motionを常時モニタリングに利用したり,光ファイバセンサを導入したりと,当時では非常に先駆的であり,かつ大プロジェクトでした.三木千壽先生のとても親身なご指導のもと,外乱に対する橋梁の挙動,各測定データにおけるその挙動の表れ方,その中で何に着目すれば橋梁の状態を把握できるのか,ということについて多くを勉強させて頂きました.また,研究者・技術者としてのご指導も沢山頂きましたが,社会人になる時に「とにかく現場に出て実際を見ろ」と仰って頂いて以来,現場に出て勉強することを心がけています.

当時,客員教授をされていた市川篤司先生(現総研エンジニアリング社長)に勧めて頂き鉄道総研に入社し(構造物技術研究部 配属),それ以降,鋼鉄道橋を対象に研究開発,技術基準整備,コンサルティングに携わってきました.研究開発では,特に維持管理に関する内容に取り組んできましたが,モニタリングの研究も続けております.橋桁の振動からセンシングや通信のための電力を発電するシステムの開発では,土木学会の田中賞を頂くことができました.また,ケンブリッジ大学とのモニタリングに関する共同研究では,1年間ケンブリッジ大学に赴任し,海外での研究動向や,研究の進め方について触れることもできました.先月からは,信号・情報技術研究部も兼務することになり,より高度な情報技術を橋梁の維持管理に取り入れるべく勉強をし始めたところです.

技術基準整備では,設計標準と維持管理標準を執筆してきました.鉄道の基準類は,明治時代から改訂を繰り返して構築されてきており,執筆すればするほど,諸先輩方が細部までこだわって築いてこられたものであることが分かってきます.基準として体系化していく事や,技術を実務で活用できるようにしていく事の難しさを痛感していますが,まさに温故知新であり,諸先輩方の偉業を基準類をとおして勉強させて頂くことで,前に進むことができています.

コンサルティング業務では,鉄道事業者から相談される疲労き裂などの諸問題への対応にくわえ,地震や出水などの災害対応も行っています.先の熊本の震災では,加速度ではなく地盤変位によって損傷した橋梁の対応をしましたが,現場に出る度に新たな損傷形態に悩み勉強しはじめ,それを前述の研究開発や技術基準整備に繋げていっています.

このように,勉強しても次の勉強題材に出会うことを繰り返し,その中で橋に魅了され,鋼鉄道橋の役に立てればと日々邁進しております.

次回は,鉄道総研へ出向に来て頂いて以来一緒に勉強し続けている,東日本旅客鉄道株式会社の山口愼さんにお願いします.

 

愛知製鋼