阪神高速道路(株) 建設・更新事業本部 神戸建設所設計課 課長代理 杉山 裕樹
幼少の頃からもの作りが好きな性格でしたが、中・高校生の時に明石海峡大橋が建設されており、主塔が出来上がり、ケーブルが渡され淡路島とつながり、補剛桁がつながるのを目の当たりにし、橋に魅了され、私もこのような大きな橋を造りたいと思い、土木工学を目指すようになりました。そのような折、大学入学試験の翌々日に阪神・淡路大震災が発生しました。阪神高速の倒壊やビルの倒壊、炎に包まれる神戸の街がいまだに忘れられません。私にとって土木工学への思いを一層強くした出来事でした。 大学ではコンクリート梁部材のFRPシートによる補強のメカニズム解明に取り組みました。就職では、橋梁に携わりたい想いが強かったことと、いつか湾岸線の延伸事業に携わりたいという無謀な想いから阪神高速道路公団(当時)に入社しました。 阪神高速では既設橋梁の耐震補強設計や京都線の現場監督などに携わりながら、橋梁のイロハを学びました。 大きな転機となったのは、初めて管理部門に配属され、当時大きな課題となっていた鋼桁や鋼床版の疲労問題に取り組んだことでした。特に鋼床版の疲労問題ではこれまでにない点検・調査手法の開発から補修・補強方法の開発、さらには新設鋼床版の構造の開発まで携わることができました。 点検・調査手法では土木ではない専門メーカーの方との共同研究により渦流探傷法や超音波探傷法を用いた点検・調査手法を確立し、実用化されました。補修・補強方法の検討では過去から多くの研究成果があり、それらを勉強しながら、橋梁メーカーの方々や大学の先生方との共同研究等により、損傷原因の解明やその対策方法を解析的および実験的に検討することができました。多くの方々のご指導を頂きながら、設計で仮定している現象だけでなく、実構造物の挙動を想像し、橋に何が起こっているのかを突き詰めることが重要だということを学びました。 これらの経験を通して、学会や協会活動に参画できるようになり、多くの有識者や技術者との貴重な出会いがあり、大きな財産となっています。 建設部門に異動となり、当時は橋梁工事が少ない中、既設路線をつなぐ連結路工事の設計に携わることができました。 ここでは、鋼管集成橋脚や維持管理に配慮した鋼箱桁のダイアフラムの開口拡大を始めとする維持管理経験を踏まえた性能向上を図る技術開発に取り組む機会をいただきました。 当時の上司は性能を高める新技術への挑戦に強い想いを持っており、様々な技術的なチャレンジを通して、私の橋梁設計への想いが形成された時期と思います。 橋梁技術の発展や橋梁の魅力向上のためには新技術への挑戦がとても重要と思っておりますが、橋梁設計において新技術を適用する場合には、実現象を想像すること、メカニズムを理解すること、細心の注意を払いあらゆる課題を想定・克服しておくことが重要であると考えています。 現在は、7年前より湾岸線の神戸区間建設の橋梁設計に携わっています。最近の日本では数少ない長大橋も計画されており、世界に誇れる橋梁計画と先進技術への挑戦をビジョンとして、取り組んでいます。 私の橋歴はまだまだ浅いですが、この湾岸線の建設事業を通して、諸先輩方に恥じないように、日本の技術者の英知を集結させ、新技術へのチャレンジも含め、世界に誇れる橋梁の実現に努力していきたいと考えています。 次は、鋼橋の疲労で丁寧にご指導くださった三井造船鉄構エンジニアリングの内田大介さんにお願いします。