(一財)首都高速道路技術センター 技術研究所第一研究開発室 係長 平山 繁幸
私の橋との関わりのスタートは、大学4年生。法政大学森猛先生の研究室(鋼構造研究室)に配属された時でした。卒業論文のテーマは「疲労き裂を有する薄いステンレス鋼板を用いた疲労損傷度モニタリングセンターの実用化」。疲労き裂を入れた薄いステンレス鋼板を鋼部材に貼り付け、繰返し荷重によって伸びたき裂の長さからその部材に蓄積されたダメージを推定するものです。毎週行われた先生とのディスカッション(先生の話を聞いているばかりで、全くディスカッションにはなっていませんでしたが)では、初めて聞く用語ばかりで、頭の中に「?」マークがいっぱいでした。 大学入学時から大学院に進学することを決めていたので、そのまま修士課程に進学。修士1年時に先生から博士課程への進学を勧められ、数ヶ月考えた結果、博士課程に進学することを決意し、それに伴い研究テーマも変更になりました。博士課程への進学を決意した時は、果たして何年で修了できるのか不安でしたが、先生をはじめ、周りの方々のおかげで3年で学位を取得することができました。 大学院修了後は、東京鐵骨橋梁(現:日本ファブテック)に入社しました。最初に携わった仕事は、首都高速道路の鋼製橋脚の補修設計でした。その数年前から鋼製橋脚隅角部に発生した疲労き裂が問題となり、当て板による補強が行われていました。私が担当したのは、隅角部に当て板補強をした鋼製橋脚の耐震性能を評価するために行った三次元FEMでのプッシュオーバー解析です。 学生の時からFEMは使っていましたが、弾性解析しか行ったことがなく、材料非線形や大変形を考慮したFEMは初めてだったので、計算が完了するまで苦労しました。当時上司であった入部孝夫氏(現:日本ファブテック執行役員)や客先の監督職員だった下里哲弘先生(現:琉球大学准教授)にご指導いただきながら、その成果は論文としてまとめることができました。 入社して2年目からは、日本鋼構造協会の疲労強度研究部会に参加させていただき、鋼橋のシェアを拡大するために、設計や維持管理で抱える疲労に関する課題に対し、部会長であった名古屋大学舘石和雄先生をはじめ多くの部会員の方々から有益なアドバイスをいただきながら、実験や解析に取り組みました。この部会は、部会長が芝浦工業大学穴見健吾先生に替わりながら現在も続いています。 2013年からは一般財団法人首都高速道路技術センターに就職し、首都高速道路の鋼構造物の維持管理に携わっています。特に、2014年3月に発生した高速3号渋谷線の火災では、通行車両を安全に通すことの大変さを実感しました。少しでも早く通行止めを解放するために、昼夜を問わず被災した鋼桁の健全度調査に取り組みました。 現在は、2015年7月に設立された技術研究所において、首都高速道路が抱える維持管理上の課題に対する技術開発を行っています。首都高速道路が開通してから50年以上が経過し、維持管理の重要性は増すばかりです。また、限られた予算の中で構造物を健全な状態で維持していくためには、維持管理の効率化も求められています。今後は、新しい技術を取り入れながら、構造物を少しでも健全な状態で次の世代へ引き継いでいけるよう努力していく所存です。 次回は、日本鋼構造協会の疲労強度研究部会でご一緒させていただいている横河ブリッジの清川昇悟さんにバトンタッチします。